| 【発表内容】 |
(はじめに) 近年、生活環境の著しい変化により、鼻アレルギーなどのI型アレルギー患者が急増している。この原因として、花粉やダニなどのアレルゲンが増加していることに加え、いわゆるアレルギー感受性の亢進が示唆され、この面ではとりわけ衛生仮説が注目されている。すなわち、乳幼児期において細菌感染の機会が少ないことから、Th1細胞の発達が不充分であり、幼児期以降、Th2優位なバランスが成立し、IgE抗体が産生されやすい体質になることが大きな要因であると考えられている。
一方、乳酸菌に関しては、Th1を刺激してTh1/Th2のバランスを改善し、IgE抗体の産生を抑制するという報告がなされてきており、Th2優位なアレルギー体質を改善できる可能性が期待されている。そこで、動物に対する経口投与実験系にて活性の高い乳酸菌を選抜し、アレルギー症状に対する改善作用を検証することにした。
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| (IgE抑制作用とメカニズム) |
BALB/cマウスに対し、卵白アルブミン(OVA)の腹腔・経鼻感作によりOVA特異的IgEレベルを上昇させたモデルマウスを作出し、各種乳酸菌発酵乳を経口投与したところ、乳酸菌の菌種の違いによってOVA特異的IgEレベルに差異が認められた。この中から高活性株としてLactobacillus acidophilus L-92株(以下L-92乳酸菌)を選抜した。本株をBALB/cマウス脾臓細胞に添加したところ、IL-12ならびにIFN-γの産生促進ならびにIL-4抑制が確認されたことから、Th1/Th2バランスをTh1優位に誘導することによりIgE抑制作用を示すことが示唆されている。また、L-92乳酸菌をTLR2 KO、TLR4 KO、MyD88 KO各マウス脾臓細胞に添加しIL-12産生を検討したところ、IL-12産生誘導が著しく低くなったことから、L-92乳酸菌はTLR2ないしTLR4を介してIL-12産生を高め、Th1誘導を示すことが示唆されている。現在、L-92乳酸菌がT細胞へのアポトーシスを誘導する可能性が示唆されており、詳細に検討中である。
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(臨床試験結果) |
ヒトでのI型アレルギー抑制作用を検証するため、花粉症を自覚しており、かつスギ花粉抗体陽性の社内ボランティア23名を対象に、L-92含有乳酸菌飲料もしくは擬似飲料(100mlを1日2本)をスギ花粉飛散時期に約6週間連日摂取させた。鼻の症状には差はみられなかったが、眼の症状スコアがL-92乳酸菌摂取群において有意に低値で推移した。血液中のIgEレベルやTh1/Th2バランスに有意な変化は認められなかった。
次いで、花粉症に比べて症状の比較的安定している通年性アレルギー性鼻炎患者49名を対象に、L-92含有乳酸菌飲料もしくは擬似飲料(100mlを毎朝1本)を8週間連日摂取させたところ、プラセボ群と比較して鼻の症状スコアが有意に低下し、眼の症状スコアも減少傾向を示した。医師の判断による全般改善度においても、L-92乳酸菌飲用群で有意な改善が認められた。飲用終了2週間後には何れのスコアも再度上昇し、L-92の飲用による効果であることが示唆された。一方、血液中のIgEレベルやTh1/Th2バランスには有意な変化が認められなかった。
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| (おわりに) |
| L-92乳酸菌経口摂取によるアレルギー症状の改善に関する試みにおいて、花粉症および通年性アレルギー性鼻炎への有効性が示され、L-92経口投与の有効性が示唆された。しかしながら、有効性を示す疾患領域、投与タイミング、投与期間ならびに用量など、検討の余地は大きい。加えて、作用メカニズムについても充分な検討が必要である。食品によるアレルギー体質の改善の可能性を見極めるためには、地道な研究の積み重ねが必要であると考える。
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