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血圧ライブラリー
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高血圧の治療に食事療法は欠かせません。統計によると、血圧が高いのに食事に注意していない人は注意している人に比べて命をなくす率が2倍も高くなります。食事療法をルーズにして、薬にとびつくのは大間違いです。
高血圧の食事療法で最も重要なことは、食塩の制限です。これは単に血圧を下げるだけではなく、降圧剤の効果を強めてその使用量を減らすため、また、血圧の不慮の上昇を防ぐためにも有効です。食塩制限もせずに利尿降圧剤だけに頼ろうとすると、糖尿病や痛風を誘発したり、体内のカリウムが減って心筋梗塞が起こりやすくなります。
高血圧は、食塩を減らしただけで血圧が下がる場合が少なくありません。もし、厳重な食塩制限(1日5グラム以下)を守れたなら、軽い高血圧であれば、それだけで血圧は正常に戻ります。たとえ降圧剤でふだんの血圧が下がっていたところで、食塩を制限していないと、寒冷や精神的ストレスなどを受けたときに血圧は突然上昇してしまいます。
■食塩の摂取量
1日当たりの食塩摂取量は、血圧が高くない人で10グラム、高い人では6グラムです。この分量は調味料としての食塩の量ではなく、味噌、しょうゆ、ちくわ、食パン、缶詰などの加工食品に含まれる塩分を全部合わせてこれだけという意味です。
欧米諸国では循環器疾患にかからないための食事がいろいろと考えられていますが、食塩の量は、血圧が高くない人でも1日5グラムが好ましいとしています。WHO(世界保健機構)の提言も同じです。
日本だけは、好ましい量を10グラムとしています。日本人は「塩食い人種」といわれるほど塩を多量にとる食習慣をもっているため、「5グラムが望ましい」と言ったところで現実はそれにおぼつきません。
以上述べた塩の分量は予防の場合です。それでは実際に高血圧になった場合にはどのくらいが適当でしょうか?欧米では1日2〜3グラムという厳しい制限をしています。日本では現状をふまえて6グラムを目標としていますが、国際通念からするとまだまだとりすぎといえる量だということを忘れないでください。
■減塩のコツ(味覚の上で満足感が得られれば、塩分を減らしても気にならなくなります)
・新鮮な材料と調理の工夫により、食品のもち味を生かしておいしくいただく。
・熱いものは熱く、冷たいものは冷たく。食べ物をいちばん引き立たせる温度でいただく。
・レモン、ゆず、すだち、などの酸味を利用して食塩の量をおさえる。
・うま味のある材料や香辛料を上手につかって食塩の量をおさえる。
・ごま、クルミ、のりなどをうまく使って風味とこくを楽しむ。
・食品中の塩分量を覚えておく。
・料理はうす味でつくり、調味料はセルフサービスで加える。
・一品に重点的に塩分を使い、ほかのものを無塩食にすると満足感が得られる。
・お寿司など外食で食べるメニューを、塩分をおさえた手づくり食にする。
・減塩調味料をつかう。また、おひたしや刺身にかけるしょうゆは、だしで薄めてつかう。
・おしるこなどに隠し味として使われている塩分に注意する。
・ご飯に洋風のおかずの組み合わせだと、塩分量を抑えられる。
・牛乳を飲んだり料理に入れると塩分の影響が少ない。

血圧を下げる薬がまだ無かった時代に、血圧がご飯と果物だけの食事でみごとに下がったという報告がなされました。この降圧のしくみは、実は低ナトリウム、高カリウムにありました。
カリウムは体内でナトリウムと反対の作用を発揮します。つまりカリウムがあると、ナトリウムは悪さをしにくくなるのです。しかもカリウムは、細胞内にたまっているナトリウムを腎臓から尿中に追い出す作用をもっており、そのことによって血管壁のナトリウムを減らし、細動脈の抵抗が減るので血圧が下がるのです。したがってカリウムの多い食品をとれば、食塩の害が緩和され、血圧降下におおいに役立つわけです。
特に利尿降圧剤を服用している人は、薬の作用でナトリウムといっしょにカリウムも排泄されてしまうので、積極的にカリウムを補給しましょう。
■カリウムを補給するには
エスキモー、ブッシュマン、マサイ族などのように、原始の時代から変わりなく自然のままの食生活を営んでいる原住民たちは食塩をほとんどとらず、高血圧にならないことはよく知られています。南米アマゾンの秘境に住むヤノマモインディアンは、1日にとる食塩の量がわずか0.1グラムだということです。
それだけでも彼らが高血圧にならない理由がわかりますが、さらに驚くべきことには、カリウムを1日に8グラムもとっているのです。日本人のカリウム摂取量は平均して2グラムそこそこで国際的にも少ない事が有名ですが、彼らの4分の1しかありません。
カリウムは、少なくとも1日に2.5グラム、理想を言えば1日3グラムはとりたいものです。ただ、薬物としてカリウムを補給しても、細胞の中までは入りにくく、いったん入ってもすぐに細胞外へ出されてしまうとされています。やはり、食べ物に自然に含まれている形でとるのが一番よいでしょう。カリウムは調理によって失われることが多いため、生のまま食べられる野菜や果物から摂取するのが良いでしょう。

たんぱく質の不足が、高血圧や脳卒中の発症に拍車をかけることが知られています。特に、高血圧の遺伝的素因がある人が食塩だけをとった場合と同量の食塩とたんぱく質をともにとった場合を比較したところ、後者はあまり血圧が上がらないという結果が出ました。そして尿中にナトリウムがどんどん排泄されていることが確かめられました。つまり動物性たんぱく質は、ナトリウム排泄を促進する作用があり、これが食塩の悪影響を打ち消したのだということがわかったのです。
■動物性たんぱく質と植物性たんぱく質のバランス
たんぱく質はアミノ酸がたくさん結合して構成されたものですが、このうち、血圧を下げ、脳卒中を予防する作用が強いアミノ酸は、メチオニン、リジン、プロリンといったところです。中でも魚に含まれているメチオニンには血圧を下げる作用があり、このアミノ酸を含まない大豆などの植物性たんぱく質には血圧を下げる作用はありません。
しかし、動物性たんぱく質のとりすぎによる粥状動脈硬化症を発生することはなく、大豆たんぱくに含まれるアルギニンというアミノ酸の作用によりコレステロールを低下させることがわかっています。
成人の1日あたりののたんぱく質必要量は、体重1キログラムあたり1グラムです。動物性たんぱく質と植物性たんぱく質を半々ずつ、また動物性では、肉類と魚類を半々ずつとるのが理想的です。

高血圧の重要な合併症の一つである心筋梗塞は、血清総コレステロールの増加にともなって発生する率が高くなります。食品からコレステロールをとれば血清中のコレステロールが増えるということで、米国では1日あたりの摂取量を300ミリに制限するようすすめています。
しかし、血液中のコレステロールは8割が体内で作り出されるものであり、食品から吸収されるコレステロールは4割で、残る6割は排泄されてしまうため、多少コレステロールを多くとっても血清コレステロール値にはあまり関係がないことがわかってきました。
血液中のコレステロールに大きく影響するのは脂肪です。十分な脂肪を摂取しないとコレステロールは腸から吸収されにくいためです。特に日本人の場合、欧米人ほど脂肪の摂取量も多くないし、血清コレステロールがふえにくいタイプの人が多いようです。ただし、検査を受けて異常に血清コレステロール値が高い人は、当然のことながらコレステロールを含む食品を制限しなくてはなりません。
また、高血圧の人は動脈硬化をおこしやすいのですが、血液中のコレステロールや中性脂肪が多いと動脈硬化がいっそう促進され、狭心症や心筋梗塞になりやすくなります。砂糖や果糖のとりすぎも中性脂肪が増える原因となります。気になる人は、菓子類、ジュース、くだもののとりすぎは禁物です。
肥満にも気をつけなくてはなりません。太ると血液中の総コレステロール、中性脂肪をはじめ、血糖値や尿酸値が増加し、コレステロールの中でも動脈硬化を進みにくくする善玉といわれるHDLコレステロールが減るため、動脈硬化の進行を早めてしまいます。
■動物性脂肪と植物性脂肪のバランス
一般に、動物性脂肪はコレステロールをふやし、植物性脂肪は減らすといわれていますが、そう単純なものでもありません。脂肪を構成している3種類の脂肪酸(1価不飽和脂肪酸、飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸)がそれぞれどのくらい含まれるかによって、コレステロール値への影響も変わってくるのです。
飽和脂肪酸(主に動物性脂肪で、バター、ラード、ヘット、生クリームなど)はコレステロールや中性脂肪を増やす働きをするといわれ、多価不飽和脂肪酸(主に植物性脂肪で、ベニバナ油、コーン油など)にはコレステロールを下げる働きがあるといわれています。(ただし、ベニバナ油などもとりすぎは良くありません)
例えば、飽和脂肪酸と多価脂肪酸が半々に含まれている鶏肉の脂肪は、コレステロールに全く影響はなく、むしろ多価不飽和脂肪酸の方が多い魚の脂肪は、動物性であってもコレステロールを減らします。一方、植物性の脂肪の中でも多価脂肪酸よりも飽和脂肪酸の方が多いヤシ油やココナッツ油は、コレステロールを増やしてしまいます。
多価飽和脂肪酸の中でも、注目をあびている多価不飽和脂肪酸があります。エイコサペンタエン酸というこの物質は、グリーンランドに住むエスキモーが粥状動脈硬化症をおこしにくいという事実から研究され見い出されたもので、主にイワシ、サバ、サンマ、アジといった青物といわれる魚の油に含まれています。しかし、体に良いからといってとりすぎるとよくありません。
脂肪酸の一つである1価不飽和脂肪酸(鶏肉、オリーブ油、胡麻油、落花生油)と呼ばれるものは、コレステロールをふやすこともへらすこともありません。オリーブ油を浴びるほど使うコルフ島やクレタ島に住むギリシャの人々が動脈硬化やがんにかかりにくいことを考えると、体に良いのではないかと考えられます。しかし、1価不飽和脂肪酸の中でもナタネ油に含まれるエルカ酸とよばれる脂肪酸は、心臓の筋肉を傷める作用があります。
以上のことからわかるように、コレステロールを下げたりより健康になるために、どの脂肪、脂肪酸をとっていれば安心ということはなく、偏りなくバランスよくいろいろな脂肪をとることが大切です。
脂肪の摂取量は1日に摂取する総エネルギー量の20%から25%。また、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の摂取量はほぼ等しくするか、少し飽和脂肪酸の割合を減らします。動物性食品である肉と魚の量は半々ぐらいにします。農村や山村では動物性脂肪のとり方が少なめで脳卒中の発生率が高くなっているため、少し増やし気味にしましょう。

食物繊維は、血液中にふえすぎたコレステロール値を下げる働きをもっていることはよく知られています。また、繊維質には、腸内で細菌が作り出す発癌物質を取り除いてしまう作用があることがも確認されました。食物繊維にはセルロース、ヘミセルロース、ペクチン、アルギン酸、グルコマンナンといろいろありますが、腸の中で胆汁酸を吸着し、便といっしょに排泄させてコレステロールを下げるという働きをもっています。
胆汁酸は脂肪の消化を助けるために胆のうから出てきますが、目的を達した後は小腸の末端部で完全に再吸収され、肝臓へ戻り再び利用されます。食物中の繊維質が多ければ胆汁酸は再吸収されずにどんどん失われますので、胆汁酸を減らさないように体内のコレステロールが次々と胆汁酸へと変わっていくのです。
ところが、最近の日本人の食生活では食物繊維をあまりとらなくなり、胆汁酸が足りなくなることがないため、1日に500ミリグラムとか1000ミリグラムも生産されるコレステロールは使われぬままどんどん血液中にふえてきます。コレステロールや脂肪をとりすぎてもいないのに、血清総コレステロール値が異常にふえている人は、実は繊維質が不足している場合がほとんどなのです。
繊維質は糖尿病の予防や食後過血糖の防止にも役立ちます。繊維質の多い食べものをとると、胃内に停滞している時間が長くなり、その結果食べ物を少しずつ腸に送り込むようになります。そして、血液中のブドウ糖が急速に上昇することを防ぐのです。
海草類に含まれるアルギン酸が、腸の中でナトリウムを吸着後便とともに排泄し、血圧を下げたという報告もあります。ただ、繊維質は、体に必要な微量元素も吸着してしまうこともあるので、薬ではなく食べ物からとるのが良いでしょう。

太っている人は、血圧が無理に押し上げられています。さらに若いころは標準体重で成人になって太ってくる人の高血圧症の発生率は標準体重を維持している人の4〜5倍です。特に高血圧症の遺伝的素因をもっている人は、太れば高血圧症になると考えてよいでしょう。しかし、1キログラムでも2キログラムでもやせれば、血圧はそれだけ低下します。
肥満状態を治さなければ、降圧剤のみを続けていても思うように薬が効かない場合がよくあります。また、高血圧で太っている人は、高血圧でも太っていない人や血圧が高くなくて太っている人に比べて、心筋梗塞にかかりやすいことが知られています。
太っていること自体が心臓に負担をかけるだけでなく、体内にたまった塩分も排泄されにくくなり、さらに肉体的・精神的ストレスが加わることで不慮に血圧が上昇しやすいのです。もし、脳や心臓の動脈硬化がある程度進んでいたなら、この不慮の血圧上昇によって脳卒中や心筋梗塞を引き起こす場合も十分ありえます。
■ダイエットを成功させるために
・消費熱量(仕事、運動)が摂取熱量(食事)を上回るようにする
・たんぱく質、脂肪、ビタミン、ミネラルなどの適量をバランスよく食べる

まず標準体重を調べ、1日の必要熱量を計算する
標準体重1kgにつき、ふつうの労働量の人は30kcal、やや重労働の人は35kcalが必要
たとえば身長165cmのサラリーマンを例にとると、標準体重は54.5kg。
1日の必要熱量は54.5(kg)×30(kcal)=1635(kcal)。
したがって1635kcal以上の熱量をとると太ってしまう。
■たんぱく質は?
標準体重1kgにつき最低1gは必要。 動物性と植物性を半々ずつとる。
■脂肪は?
摂取熱量の20〜25%とする。
飽和脂肪酸(主として動物性脂肪)は 多価不飽和脂肪酸(主として植物性脂肪)よりやや少なめがよい。
■ビタミン、ミネラルは?
有色野菜200gと牛乳1本はぜひとりたい
■糖質は?
エネルギー源としての働きをもっているために、肥満の仕掛け人として忌み嫌われがち。
ただし糖質を極端に減らすと、体内の新陳代謝が乱れ、脂肪の不完全燃焼で酸血症がおこったり、
たんぱく質まで燃焼しはじめて高尿酸血症がおこる。
このため、1日に最低150gは必要(ご飯1杯で糖質は34gなので、1食につき1.5杯食べれば満たされる)

外食する際は、食塩のとりすぎと栄養のアンバランスに注意します。高血圧の人が外食するのは1日に1回だけとし、他の2食は家庭食で栄養バランスをととのえましょう。

高血圧の正しい治療のために、食事は重要な意味をもっています。食塩のとりすぎや栄養過多、栄養不足などを病状に応じて工夫し是正していく必要があるため、減塩と栄養バランスに十分気をくばりましょう。
■間違った食べ方・考え方
・腹さえいっぱいになればよい(ため食いもやめましょう)
・塩辛いものを避けさえすればよい(辛くなくても食塩が入っている場合があります)
・バターや卵は有害だ(卵の食べすぎを戒められているのは、コレステロール過多の欧米人です)
・煮しめや野菜料理をあまり食べない(コレステロールを減らすには繊維質が有効です)
・1日2回以上外食する(食塩過多と野菜不足に注意しましょう)
・何にでも、しょうゆやソースをかける(塩食い人種にならぬように)
・すぐに健康食品にとびつく(かえって血圧を上げてしまうものもあります)
★[参考]健康食品について
健康食品が大きなブームとなっていますが、ひとくちに健康食品といっても、さまざまな種類があります。よく特性を知った上で活用すれば、健康の維持・増進に大きく役立つでしょう。
中でも、「体調を整える」などの働きを持つ成分を加工してあるもので、その効果や安全性が科学的に確かめられている食品を「特定保健用食品」と呼びます。こうした食品は「お腹の調子をととのえる」「血圧が高めの方に適する」など、成分に期待される内容の表記が許されています。厚生労働省が、科学的に健康に良いという根拠のあるものを積極的に認めていこうと、1991年から許可制を導入したのです。現在許可されている商品は100品目にも及んでいます。例えば、腸を整えるオリゴ糖入りのドリンクやデザート、カルシウムを補うドリンク、コレステロール値が高めの人のための食品などがあります。
血圧が高めの方に適した「特定保健用食品」に利用されている成分としては、ラクトトリペプチド(VPP、IPP)、杜仲葉配糖体(ゲニポシド酸)、カゼインドデカペプチド、バリルチロシンを含むサーデンペプチド、かつお節オリゴペプチドなどが挙げられます。
これらの降圧作用は穏やかで、薬物治療との併用も可能です。また、正常範囲内の血圧は下げません。血圧が高めの方はこれらの食品を有効に活用し、高血圧による合併症を予防して、より健康的な日々を過ごしましょう。
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